今日の本は、以前紹介しました、基礎編があります。
基礎編の記事はこちらからご覧ください。
https://nin-kakurezato.com/kisekinokeizai-kiso/264/
国の成長戦略には「賃金主導型」と「利潤主導型」の2パターンがあり、
それぞれ「アメ」戦略と「ムチ」戦略と呼ばれています。
本記事で紹介する 奇跡の経済教室【戦略編】は こんな人におすすめします
▶︎成長戦略の種類について知りたい
▶︎「賃金主導型」と「賃金主導型」の2つについて知らない人、知りたい人
書籍紹介
タイトル 全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】
著者 中野剛志
出版年 2019年7月
出版社 KKベストセラーズ
価格 1,700円(税抜)

読みやすさ ★★☆☆☆(図表もありますが内容は少し難しい)
実 用 度 ★☆☆☆☆(考え方に関する本です)
本 棚 度 ★★☆☆☆(手法より考え方が学べます)
読書時間 約3時間
2種類ある成長戦略

国家の成長戦略には大きく分けて次の2つがあります。
①賃金主導型(アメ型) 賃金の上昇によって経済成長を実現する
②利潤主導型(ムチ型) 企業の利潤によって経済成長を実現する
それぞれ解説します。
①賃金主導型(アメ型)

アメ型は労働者の賃金が上がることによって経済が活性化する、という考え方です。
日本は今、デフレによる不況に苦しめられており、賃金はバブル崩壊以降下落しています。
私はサラリーマンですので、賃金が上がってくれたらうれしいです。
iphoneやパソコンなど便利になりましたが、そもそもそれを持っていないと「生活」がかなり不便になります。
これはあったらいいな、という世界だったのが、だんだん「あって当然」になってきたからです。
バブルの時は、人手不足で賃金や待遇の良さで人材を獲得していました。
働き手には嬉しい環境ですね(味わってみたい)
しかし経営者にとっては、人を安く使えないので、困った状況です。
人件費が上がると、経費や直接労務費が上がるので、利益が減りますよね。
アメ型戦略の場合、政府が主導して最低賃金の上昇や、労働組合の力で、
ベア(ベースアップ:毎年の賃金上昇)を仕掛けてきますので、人件費が底上げされて行きます。
企業は高い人件費をペイするために、より良い製品・サービスを作り出して、世の中に売らないといけない状態が発生しますが、一般消費者も賃金が上がっているので、それを買う、という好循環が生まれます。
アメ型はインフレを発生させ、デフレ対策になります。
アメ型の制約条件(弱点)
アメ型の弱点は、企業側が賃上げを飲むしかない状況にある、というのが前提です。
賃上げを受けなければ、労働力が確保できずに、事業が運営できない状態にないといけません。
しかし、グローバル化で、製造業はどんどん海外に工場を進出させています。
こうなると日本国内での賃上げを受けなくても、海外で作ればいいので、企業としては存続できます。
本社も移転させてしまえばよいのです。
また外国人労働者や派遣社員、バイトなど、安い労働力を使えない専門的な領域であることも必要です。
そういった国境や労働力の「壁」がないジャンルでは、成立しない戦略になり、現在の規制緩和などをしている状態では成立しません。
今の日本にそんなことができるでしょうか。TPPやアメリカの要求でどんどん解放せざるを得ない状況(を自ら作り出している)にあります。

②利潤主導型(ムチ型)

アメ型とは違い、ムチ型は企業が成長をすれば経済は成長する、という真逆の考えです。
安い労働力や、流動的な人材は、企業にとって都合が良いです。
また、雇用が流動化すると、求職者が増えるので、雇用側に有利に働き、労働力を「やすく」入手できます。
規制緩和や派遣などがこれを実現する手段で、今の日本はこちらの手法になっています。
また「企業」は誰の持ち物でしょうか。
株式会社の場合、会社法上、会社の持ち主は「株主」です。
そのため、会社の利益は株主に還元されることになるので、利益が出ても賃金を上げるのではなく、配当などに回すことになります。
アメ型とは反対に、ムチ型はインフレ対策になりデフレを助長します。
賃金が伸びなければ、消費が進まなくて、企業も困る、というのは以前はそうでした。
しかし今は、グローバリゼーションが拡大しているので、国内で売れなければ、海外で売ればいいのです。実際にスズキはインドで大成功してますが、インドで売れてもスズキという会社は儲かりますが、日本人の賃金、日本への法人税には関係ありません。
(実際には日本スズキと連結会計になりますが、海外優遇などあり、法人税は減税されています)
では、日本の株は誰が持っているのでしょうか。
企業にもよりますが、例えば6702富士通は約55%の株式を外国人が持っています。
また市場でも外国人の売買動向が、日本の株価にも大きく影響しているのは明らかですね。

終わりに
今日は
【感想・レビュー】奇跡の経済教室【戦略編】を読んで アメ・ムチ戦略を学ぶ
を読んで、感想を書きました。
「会社の利益になるために全力で考えろ」と言われますが、
会社の利益になって、その利益はどこに流れているのでしょうか。
事実としては賃金はバブル以降下がっていることと、日本の経済成長率は他の先進国に比べ最低水準です。
「国」「企業」「国民」 どの戦略をとればどこに有利に働くのか。
これを考えるのは政治の仕事ですが、みなさんも一度考えるきっかけになると幸いです。
では、またー。しゅたっ!
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